紬(つむぎ)の代表的なものといったら、奄美大島を中心に作られている都会的な雰囲気の「大島紬」と、真綿でざっくりと織られた素朴な「結城紬」と言えるでしょう。今回はそんな日本の二大紬の一つ、「結城紬」を実際に作っている「紬織物技術支援センター」に行ってきました。結城紬の魅力について、お知らせします。
1.紬織物技術支援センターとはどんな所?
栃木県内には「栃木県技術センター」があります。ここは数多くの栃木県にある技術を各地でサポートしていますが、その一つ「結城紬」を支援しているのが小山市にある「紬織物技術支援センター」なのです。一般的に「結城紬」と言うと、茨城県結城市を思い浮かべる方が多いと思いますが、栃木県小山市も「結城紬」の本場。知る人そ知ると言っても良いかも知れません。
もともと鬼怒川の清流に広がった結城地区と呼ばれるこの地域は、古代から農耕が盛んでした。豊かな土地は、絹に必要な蚕(かいこ)が食べる桑の成長にも適している事から、蚕が食べる桑を育てている桑村(現・栃木県小山市)、蚕から絹糸を紡ぎだして布を織る絹村(現・栃木県小山市)、そして織った布を結城紬として販売する結城町(現・茨城県結城市)が一体となって結城紬が守られていたのです。
2.紬織物技術支援センターの業務内容
結城紬の特徴で一番にあげられるのが、地織(じばた)と呼ばれる織り機で織りあげることです。この織り機は何と1500年も前から変わらず使われていると聞くと、不思議な気がします。
紬織物技術支援センターでは、実際にこの織り機を使って結城紬を織っている方々を見ることが出来ました。皆さん腰にベルトを当てて織っています。これが地織りの特徴で、腰の力を使って張り具合を調整しながら織っていくのだとか。また織っている方々が若い女性なので驚きです。
コロナウイルス禍のため、皆さん大きなマスクをしていますので、お顔は見えませんが、大体20~30代でしょうか?私が見学に行った時は7人で、他に糸を紡ぎながら7人の方を指導している方が2人、同じフロアーにいらっしゃいました。
この7人の方は、今年度栃木県が採用した結城紬地織り等の研修生との事です。本来なら4月から研修開始でしたが、ここも新型コロナウイルスのため、しばらくは活動できずお休みを余儀なくされていたとのお話でした。後継者育成を役所が行わなくてはいけないなんて、難しい時代ですね。
3.結城紬の特徴と魅力
結城紬は、古代から変わらぬ製法で作られているのが魅力の一つと言えるでしょう。その工程は愚直までに丁寧なのです。真綿かけや糸つむぎ、管まきや糸あげといった糸を作る工程の他に、絣の柄となる部分に染料がしみこまないようにする絣括り(かすりくくり)、たたき染めと言われる染色、糊つけや機織りなど何十もの昔ながらの工程があります。
「もっと機械化すれば楽になるのではないですか?」と係の方にたずねたら、「この昔ながらの工程が評価されたからこそ、平成22年にユネスコ無形文化遺産に登録されたのです」と言われました。
結城紬は、世界に認められた紬なのですね。
「結城紬に有名な作家さんはいらっしゃらないのですか?」と質問すると、「結城紬は分業制なのです。糸作りはおばあちゃん、染色は力仕事なので男性が、そして布を織るのはお嫁さんの仕事でした。色々な方が専門に作業を行うので、作家は生まれないのです」との事。そう言えば、京友禅も分業制なので作家はいないと聞いたことがあります。同じ理由なのですね。
ここの結城紬は「本場結城紬」となっていました。「本場でない結城紬ってあるんですか?」と聞きましたら「いしげ結城紬があります。こちらは機械織りなので量産できるため、比較的安価なのです。素人では、見た目で区別するのも難しいので、必ず商標を確認して下さい」と言われました。
実際に購入するなら、高価でこだわりのある「本場結城紬」か、見た目の変わらないリーズナブルな「いしげ結城紬」なのか・・・難しい選択になるかも知れません。
4.お土産も買えました
ロビーで展示物やモニターを見て終了です。私が行った日は、見学者は私と娘だけでしたので、丁寧にご案内いただいて楽しかったです。本来ならもっと見学者も多いけれど、これも新型コロナウイルスの関係で来場者が少ないとか。早く日常に戻ると良いですね。
帰りに入り口にあった結城紬のお財布をお土産に購入しました。落ち着いた雰囲気のお財布は、実際着物を着た時に自分で使おうと思います。
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