正装着物に欠かせない比翼(ひよく)って何?

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正装の着物の時に出てくるのが「比翼(ひよく)」です。黒留袖の時などに多く使われますが「白い伊達襟とどう違うの?」と疑問に思う方も多いと思います。あなたは、いかがでしょうか?
今回は「何となく、知っているつもりでいた」そんな比翼についてお知らせします。

1.そもそも「比翼」とは何?

もともとは中国の伝説上の鳥、それが「比翼」です。雌雄がそれぞれ眼と翼を1つずつ持ち、2羽が一対となって、まるで1羽の鳥のように空を飛ぶ鳥と言われています。やがて2羽の鳥が対となって並んで飛ぶことも比翼と呼ばれるようになりました。

2.着物の「比翼」とは?

一昔前の着物は、重ね着するのが一般的でした。一昔前・・・とは言っても、皆さんが思っているほど以前ではないかも知れません。実は作家・宮尾登美子さん(1926~2014)の自叙伝にも、着物は長襦袢や着物を何枚も重ねて着ていたとの記述があるからですから、昭和の初期頃までは、地域によっては普通に着物を何枚も着ていたのでしょう。

この風習からきているのが「比翼」や「伊達襟(重ね襟)」なのです。まるで着物の下にもう一枚着物をきているように見せる効果があります。

まだまだ暖房設備も充実していなかった時代は、着物の重ね着は暖かく過ごしやすかったようです。でも気密性の高い建物が増え、女性が活動的になるにつれ、重く動きにくい着物の重ね着は避けられ、今は肌襦袢・長襦袢・着物というシンプルな着方に変化してきました

ただし完全な簡略化は礼を欠くという事から、現代ではフォーマルな席では「比翼」や「伊達襟」を使っています。

3.比翼と伊達襟の違い

襟の部分だけにあるのが「伊達襟」、襟だけでなく「袖口」「振り」さらには「袵(おくみ)」と言って、着物の前身頃の縦ラインにまであるのが「比翼」です。

伊達襟は、結婚式やお子様の入学式&卒業式には「白色」もしくは「淡い色」と言われていますが、パーティなどでは着物や帯に合わせて様々な色を組み合わせます。胸元に一筋見える伊達襟はとても目立ちますから、お洒落の要素も高いアイテムと言って良いでしょう。

「比翼」は白色で、一番格式の高い五つ紋の着物とセットになります。「伊達襟」は、着物や着付けで交換しますが、「比翼」は違います。「比翼」は「比翼仕立て」といって、専門家に比翼を付けて縫ってもらうのです。「その日の気分」で代えられるものではありませんので注意しましょう。

4.比翼を付ける着物とは何?

比翼を付けられる着物は限られています。

まず「黒留袖」。これは既婚女性の正礼装で一番格式の高い装いです。染め抜きの五つ紋で、比翼を付けなくてはいけません。ただし、重ね着時代の黒留袖であれば、比翼は付いていません。この場合は、黒留袖の下に下着用の白い着物を着ればOKです。

次は「色留袖」です。以前は黒留袖も色留袖も既婚女性の着物と言われていましたが、最近では未婚女性も普通に着るようになりました。黒留袖が五つ紋必須なのと違い、色留袖は五つ紋、三つ紋、一つ紋と紋の数を変えることができるので、便利なフォーマル着として人気をよんでいます。

五つ紋ならば黒留袖と同格になることから、比翼仕立てをすることが一般的です。三つ紋や一つ紋の場合とは違いますから、「五つ紋を付けたい」と思ったら、着物屋さんに相談して下さい。

留袖は祝儀の着物ですが、正装には不祝儀もあります。それが「喪服」です。

喪主や近親者だけでなく、会葬者も葬儀・告別式に着るのが「黒喪服」となります。黒地に染め抜きの五つ紋をつけて弔意を表すのが、黒喪服です。比翼は付いているもの、付いていないものどちらもあります。

かつては、黒喪服も慶弔用で使われた時代があったので、比翼を付けるのが一般的だったようですが、現代では祝儀・不祝儀別々の装いにすることが増えてきたので、喪服に比翼を付けることは減ってきたのです。とはいっても、葬儀の習慣は地域や家風によって違いますから、周りの方の意見を聞きましょう。

5.まとめ

いかがでしたか?比翼と一言でいっても、伊達襟などと違い、着付けで簡単に交換できるものではありません。しっかり事前準備が必要なアイテムなのです。

難しいかもしれませんが、フォーマルな装いには欠かせないものですから、これを機会に覚えてください。安心して着物を楽しみましょう!

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